日本万歳時代の「反復帰論」
鹿野政直著『沖縄の戦後思想を考える』(岩波書店 2018年)で触れる沖縄の戦後思想で注目したいのは、「反復帰論」である。米軍統治下にあった沖縄が、本土に復帰する道筋が見える中、このまま日本の一部に戻ることに疑問を投げかけた。もちろん、ストレートに独立するとか米国など他国の一部になることを意味するのではない。沖縄の歴史を振り返り日本という国家との向き合い方を問い直す。一つの権力から別の権力へ無批判のうちに身を委ねる危うさを指摘する。
今のような時代だからこそ必要な姿勢ではないだろうか。大規模なテロや災害・災難の脅威を理由に、国家の強い統制がかかりやすい。中国をはじめアジア諸国の台頭によって国際社会における日本の地位が相対的に低下している影響だろう、日本がいかに素晴らしいか自画自賛したり外国人に言わせたりするテレビ番組がやたら目につく。「日本万歳」に酔ううちに、この国の正すべき点が見えなくなる。もともと「右へならえ」の伝統を紡いできた社会が、さらに同調圧力を強める。社会にまん延する日本万歳の空気に無条件に取り込まれず、国家の言動に注意を払わねばならない。