沖縄の風景を読み解く

 沖縄に移り住んでまもない頃、独特の風景に惹かれながらも、それを言葉で言い表せないもどかしさを感じた。人間がつくったものと自然の融合である風景は、言葉への置き換えが難しい。中でも建築物は知識が乏しいせいもあり、どう読み解いていいのか戸惑う。

 伝統的な赤瓦の家はそれでも特徴をつかみやすいが、戦後主流になったコンクリート建築となると、建築の素人にはどう捉えていいのか分からない。コンクリートといえば味気ない建物の代名詞に聞こえるが、沖縄のコンクリート建築は本土のものとは違う風合いがある。だがそれをどう表現するか、言葉が見つからない。素人向けに沖縄のコンクリート建築を解説してくれる書物となかなか出会えないが、『沖縄島建築 建物と暮らしの記録と記憶』(監修・普久原朝充 写真・岡本尚文)は、そんな数少ない1冊だろう。

 最近、牧志公設市場をはじめ戦後のコンクリート建築が次々と解体されつつある。文化財として指定されることはないだろうが、沖縄独特の風景を形作ってきた要素としてもっと評価されていいのではないか。(T)

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