多彩な島うたを実感

 仲宗根幸市編著『琉球列島 島うた紀行』は3集からなり、第一集が「奄美諸島・沖縄北部・沖縄中部編」、第二集が「宮古・八重山諸島編」、第三集が「沖縄本島周辺離島・那覇・南部編」と地域別に分け、それぞれの島うたの歌詞、訳、解説を掲載している。歌のテーマは労働、民俗行事歌、恋、遊び、教訓、童歌などさまざまだが、歌謡集という形でみると、小さな離島も含め琉球列島くまなく歌が育まれ、その多彩な姿を実感する。第一集のまえがきで、「歌やモーアシビーがあったから、貧しくとも生きてこれた」という古老たちの言葉が紹介されているように、琉球列島に生きた庶民が歌を求め、歌という形で表現せずにはいられない多くの思いがあった証しだろう。

 歌謡の専門家ではなく三線を少しかじった程度の者としては、どの島うたが素晴らしい、素晴らしくないとか言えないが、個人的には「ナークニー」や「いちゅび小(ぐゎー)節」が好みである。テンポのよい曲にぐっと秘めた思いを込めた歌詞が不思議とマッチしているからだ。沖縄の初夏に吹く風のように爽やかでありながら、広大な情念の世界を感じさせる。(T)

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