東北と琉球弧の共通性 『ヤポネシア考 島尾敏雄対談集』②

 対談の中で琉球弧の人々が持つ気風に関して、「遊牧民」「大平原」という言葉が出てくるところが興味深い。離島といえば小さな狭い世界のはずだが、逆に山は低く平らであるために陸地と海の境目がはっきりせず、島の中にいても大平原の中に住むような感覚的になり遊牧民的な気風が育つのでないかという。確かに、離島におっとりとした人が多いのも頷ける。

 東北と琉球弧の共通点についても繰り返し触れられているが、思い当たる節がある。ともに日本国内では辺境地として中央から支配と圧迫の対象であり、特に明治維新では強制的に中央政府に組み込まれることになった地である。もともと、縄文時代の文化が日本全体を覆っていたが、関西や関東を中心に大陸の稲作文化が入ってくることによって、縄文時代の古い日本文化は東北や南西諸島といった両端に追いやられたという歴史観はよく耳にする。怨念や土俗性が入り混じった独特の芸能・文化が育ったことでも知られる。特に、文学では東北出身として太宰治、宮沢賢治、寺山修司、石川啄木らが異彩を放つ。(T)

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