沖縄に広がる貧困の泥沼 『眉屋私記』読書日記②

 3分の2ほど読み終え、本書の印象がだいぶ変わってきた。当初は『出ニッポン記』と同様に移住者の物語と思ったが、それは一部にすぎず、明治維新後の沖縄に生きる庶民の生活苦が広く細密に描かれている。明治維新後、琉球王国は解体されて沖縄県となり身分格差のない社会になったはずだが、貧富の格差は厳然と残ったたままだ。

 一般庶民は生きるのがようやくの暮らしが続くところへ、自然災害や病魔が容赦なく襲う。保険や政府援助はなく自ら借金を重ね、その返済に充てるため、子供たちを丁稚奉公に送り出したり遊郭に売り渡したりせざるをえない。そこへ、「大金をつかめる」という海外出稼ぎのもうけ話が転がり込めば、飛びつきたくなるのも仕方ないだろう。

 しかし、こうした海外出稼ぎ話は、海外移住会社が送り出し仲介料を稼ぐための甘言であり実質的には人身売買の場合が少なくない。公的な規制はほとんどなく、貧しい者たちがさらに搾取される構造が生まれる。送り出される側は劣悪な環境のもと、事前の説明ほど給料を得られず、奴隷のごとく働き体を壊したり、耐えきれず逃亡したりした。いずれにせよ、すぐに帰国資金を手にできる術はなく、異国の地で困り果てるしかない。(T)

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