メディアにも必要な時代の検証 鳩山由紀夫、孫崎亨、植草一秀著『「対米従属」という宿痾』

 民主党による2009年の政権交代までと後では政治の空気ががらりと変わった。現在でも民主党の政策や政権運営の拙さを指摘する政治家やメディアは少なくない。いずれにせよ、政権交代の失敗が野党に対する幻滅や不信を定着させたとする声は根強い。だが、民主党以前の自民政権にしろ、その後の安倍政権にしろ、問題はなかったのか。少子化対策や巨額の国の債務、国際競争力の低下、デフレと賃金の低迷など重要課題は何一つひとつ改善されず、むしろ悪化している。

 本書のタイトルでもある「対米従属」は深まっている。米国主導の安全保障体制に組み入れられ、事あるごとに「日米同盟」の強化が叫ばれるが、日本の安全保障が高まったという声はほとんど聞かない。危機感は高まるばかり。米国に押し付けられた憲法を改正すると主張する一方、米国への依存を深めるという政策は整合性があるといえるか。

 また、安倍政権時代、北方領土交渉の進展を期待し、プーチン大統領に対して融和的な政策がとられたが、結果的に何も変わらなかった。この時期にはすでにロシアのクリミア侵攻は始まっていて、ウクライナを侵略しても国際社会で反対する声は小さいとプーチン大統領を誤解させたとする指摘もある。一方、米国は、アフガニスタンから撤退しタリバン政権の復活を許し、ウクライナに対して武器援助はしても直接的な軍事支援は避けている。米国は本気で協力国や友好国を守る気があるのか疑問を抱かせる。

 本書では民主党政権時代の内幕やその後の安倍政権について語られているが、そのまま信じるかどうかは別として、民主党時代とその後の自公政権時代を批判的な視点から振り返ることは欠かせない。特に、メディア自身も外交面で政府の政策を追認する姿勢が目立ち、報道内容が正しかったかどうか改めて検証することは必要だろう。(T)

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