例外的な存在としての国体と米国 古関彰一著『対米従属の構造』

 創設まもない時期、自衛隊の指揮権を米軍が持つとする指揮権密約にはじまり、朝鮮半島の有事密約、安保改正での核密約、沖縄返還をめぐる核密約、さらには日米ガイドラインなどを経て、日本は安全保障面で従属化を深める戦後史を検証している。その結果、日本国内には平和憲法と人権・国民主権を基盤にした法体系がある一方で、これらに相いれない形で、日米安保条約や日米地位協定、さらに日米政府間の公表されない取り決め・交渉が存在し、力関係では後者が前者を上回ってきたと著者は説く。

 本書で特徴的なのは、こうした対米従属を戦前の国体思想に結びつけたところだろう。米国と国体(天皇)は、ともに法律や憲法の例外的存在として扱われ続けたという指摘は興味深い。戦前と戦後で政治体制が劇的に変わる中でも、日本国民は例外的存在を求めるという仮説は妙に説得力を持つ。理論的な分析を施すことすら憚れるような、圧倒的な存在に無条件で寄りかかりたいという欲望が見え隠れする。(T)

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