現在の墓文化は近世からか 梅原猛・中西進編『霊魂をめぐる日本の深層』

 沖縄からは複数の専門家が寄稿や討論に参加しているが、意見が割れているところは意外である。表題から察せられるように、霊魂や神という壮大なテーマを扱うせいで、各研究者の対象地域や判断基準によって解釈が異なるようにみえる。例えば、沖縄の神々は「来訪神」か「祖先神」か。簡単に判断できそうに思えるが、見解は割れる。沖縄が抱える多様性や曖昧さが影響するのだろう。

 また、墓制に関する考察も興味深い。定期的にお参りするなど墓を大切にする文化は古くからの伝統と思っていたが、近世になって父系制が入って家系や系譜の権威づけが始まり、それを背景に墓がつくられ墓を重んじる文化も生まれたという。それ以前は、母系社会時代の沖縄のほか、アイヌ社会や韓国でも、人はいったん葬られればあまり顧みられることはなかったと指摘する。(T)

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