謎多き尚氏と首里城の入門書 上里隆史著『尚氏と首里城』

 政治・経済から文化・宗教まであらゆる面で琉球王国の中心を占めた首里城だが、謎が多いことでも知られる。その原因としては、沖縄戦で関連する資料や文化財が焼失したことが大きいだろう。戦後、首里城が1992年に復元され公開されるにあたっては、どのように復元すべきか手がかりが少なく関係者が相当苦労したことはNHKのドキュメント番組「プロジェクトX」などでも紹介されている。

 同時に、城の主である尚氏についても謎が多い。450年間続いた琉球王国は、第1尚氏と第2尚氏という二つの王統からなるが、同じ「尚」を名乗っていても血縁関係はない。にもかかわらず、第1尚氏と第2尚氏もともに沖縄本島に近い伊是名島と伊平屋島が発祥の地といわれる。第1尚氏は九州から来た勢力ではないかという説もある。本書は読みやすい文章で基本的な事実を解説しているため、そうした謎多き首里城と尚氏の入門書として本書は適しているだろう。(T)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です