惜しまれる伝統的な街並み 柳宗悦著『琉球の富』②

 本書の14ページに、日本の城下町では「どの町が最も美しいか」と問われれば、ためらわずすぐに「沖縄の首里が第一」と答えると書いている。それは、83ページから94ペースに掲載される戦前の首里の写真を見れば、リップサービスでないことが分かる。いずれも建物の一部とそのごく周辺が写るだけだが、首里の町全体の雰囲気が滲み出ていて、柳が沖縄を訪れた1930年代後半ごろまで、王国時代の街並みを保っていたことがわかる。

 奈良や京都など日本の古都と呼ばれる都市は一部の限られた地域を除けば、明治維新後はまたたく間にかつても面影を失ったのとは対照的だ。それだけに沖縄戦と戦後の無秩序な開発が何とも残念で仕方ない。もちろん、現在でもごく一部ながら戦前の町並みを残している場所はある(写真)。首里城など歴史的な建造物の復元だけでなく、王府時代の街並みを復活させることにも関心を寄せるべきだろう。(T)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です