操作される日本人の境界
沖本屋の販売リストには入っていないが、本土と沖縄の関係を考える上では、小熊英二著『<日本人>の境界』に触れておきたい。沖縄が日本の領土に正式に組み入れてられたのは1879(明治12)年。ちょうど140年が経過したことになる。
沖縄の人々は日本人になったわけだが、同書では、政府の都合によって日本人に入れられたり、外されたりしてきた歴史を詳細に説明している。日本人の境界が操作されているということだ。中でも太平洋戦争中は、かなり露骨に「日本人扱い」が切り換えられた。これは、同書に限らず、沖縄戦に関連した書物では多く語られている。
沖本屋で紹介する「沖縄探見社」の本としては、『沖縄戦の狂気を歩く』では、兵力の不足を理由に、徴兵年齢よりも年下の若者が現地召集され、自爆攻撃や竹やり攻撃などの危険な任務に送り出される一方、敵に通じているみなされ、住民がスパイ扱いされた現実も描く。日本兵に惨殺された証言も多数、掲載する。『沖縄の基地と性暴力』では、沖縄戦の間、日本兵の性欲を満たすため、沖縄の女性が集められ、占領地のような慰安所が100カ所以上設置された事実にも焦点をあてている。
戦後も、沖縄を米軍占領下に置き去りにしたままの独立や、本土復帰後も続く米軍基地の集中からもわかるように、日本人の境界が権力者の都合で変えられる状況は続く(これらの点は、本ホームページの「本屋情報」でも解説している)。