通りから眺めた沖縄の地域史

 沖縄の出版物で目につくのは地域史の多さである。市町村史はもちろんのこと、字誌もかなりの数が出版され、個人の視点からつづられた地域史も目につく。沖縄は地域の共同体のまとまりが比較的残る一方、独立国家・琉球国から日本への併合や戦後27年間の米軍統治、日本への復帰など他地域に比べユニークな歴史を経験したおかげだろう。

 そんな中、NPO法人沖縄ある記編『沖縄の戦後を歩く』は、「通り」ごとの戦後史をまとめようとした試みである。歴史といえば、為政者の視点から描かれ、かしこまった無味乾燥な記述が多くなりがちだが、「通り」に視点を移すことによって庶民の喜怒哀楽や暮らしに焦点が当たる。戦後の那覇市中心街についていえば、「米軍の思惑に左右され、計画的な街づくりも思うに任せないなか、人々は限られた区域の中で、ひしめきあって暮らさざるを得なかった。職を求めて沖縄各地から集まってくる人々で、那覇は急激に膨張し、インフラ整備が追いつかないものの、街は立ち止まることなくエネルギッシュに発展を続けた」。(T)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です