輝きを失うリベラル

 吉田徹著『アフター・リベラル』を読むうちに、自分がどんな時代に生きてきたか漠然と浮かび上がる。特に、最もエネルギーに溢れていた10代後半から30代前半は、当時「リベラル」という言葉は使わなかったが、「自由」が人生の中心を占めていた。地縁、血縁、慣習、旧弊、昔のしきたり、すべての柵(しがらみ)から解き放たれ自由になることによって、自分の能力を最大限に生かせる時代がやってくると信じていた。

 しかし、同書が指摘するとおり、リベラルの波は従来の人間関係や地域共同体、労働組合といった組織も解体し、個人を自分の才能や意志以外には防御手段を持たないまま、競争社会に投げ出しグローバル化の激流に放り込むことになる。「個性の時代」のファンファーレが鳴り響き、能力主義や効率主義の名のもと、他人を横に見ながら終わりのないレースを繰り返す。一部の勝者は莫大な富と名誉を受けられるものの、多くの落伍者を生み、憎悪や虚無感が肥大する。見捨てられ、何かにすがりたいと願う人々に向けて、ポピュリズムやナショナリズム、テロリズムが育つ。(T)

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