消えない本土への違和感 『まぼろしの祖国』読書日記②

 本書の舞台は、ちょうど1945年から1972年までの米軍統治の27年間である。登場人物は個人事業家、琉球政府の役人、地元紙の新聞記者、教職員組合の専従職員、小料理屋の女将など多様であり、本土復帰へ向かう沖縄の変化をどう受け止めるかはそれぞれ違う。しかし、一致するのは、得体の知れない不安や不満であり、本土への違和感だろう。

 もとをたどれば、自分たちの未来を自ら決められないという事実にたどり着く。その心情は、多数派の立場にいる人間には理解しにくい。直接的にしろ間接的にしろ多数決によって決定すれば、正しさを獲得したと思い込む人は多いからだ。米軍統治下では米軍が敷いたレールの上を、復帰が近づくと日本が敷いたレールの上を走る以外の選択肢を、沖縄が見つけることは難しかった。復帰後も、辺野古新基地の建設をはじめ米軍基地をめぐってはこの構図は大きく変わらない。(T)

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