消えゆく祈りと多様性 『うるまの島の古層』

 毎日同じことの繰り返しにみえても、少しずつ変化が起きる。日々天気が変わるように自然も違う顔を見せ、時には天変地異が起きる。おまけに近年、科学技術の進歩も目まぐるしい。他人が敷いたレールやスケジュールに沿って動き、変化に追われるだけで精いっぱいになり、心の平穏を取り戻せない。

 仲松弥秀『うるまの島の古層』を読んでいると、表紙が象徴するように、昔の琉球弧の人々がいかに多くの祈りを捧げ、人生の不条理や抗えない自然の力に向かって心の平穏を保とうとしてきたかが思い浮かぶ。神は海の向こうから訪れ、陸地の聖地に立ち寄った後、再び海の向こうへ帰っていく。海は眺めるだけで心が落ち着く。そっと手を合わせて祈りを捧げれば、なおさらである。祈ることを忘れ、世界を物理法則と化学反応の連鎖に塗り替えたのは私たち自身である。(T)

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