琉球新報社編『ひずみの構造 基地と沖縄経済』
もうすぐ49回目の本土復帰記念日(5月15日)である。復帰から半世紀近くが経過するが、「沖縄は基地で相当潤っている」という神話はいまだに根強い。沖縄に投下された資金の総額は算出しやすい一方、その資金がどのように使われ県民の生活にどのような影響を及ぼしたか明らかにすることは容易でない。本書は琉球新報に掲載された連載記事をまとめたものだが、基地関連で見えにくい資金の流れを丹念に掘り起こしている。
中でも興味深いのは、米軍発注工事に関する記事である。それによれば、企業が入札に参入するには、ポンド(契約履行保証)制と呼ばれ、工事代金に見合った金額を保険会社が保証する必要がある。米軍は工事の発注業務を簡素化しコスト削減を図ろうと、従来は分割発注していた複数の工事をまとめ一括して発注する傾向にあるが、これにより発注金額が上昇する傾向にあり、規模の小さい県内企業ではボンドを得にくくなっている。受注金額が100億円を超える工事は、県内企業では対応できず、本土の大手・準大手ゼネコンが落札する。県内企業は利潤の少ない下請けや小口の仕事に回らざるを得ないという。(T)