基地特権にまつわる誤解とデマ 本土復帰50周年③
沖縄への共感が本土で薄らいでいるのは、他県に比べ基地で経済的に潤っているとする噂のせいもあろう。基地特権にまつわる噂は誤りや誤解が多く、客観的なデータで裏付けたり冷静に事実関係を確認したりする必要がある。元沖縄県知事の翁長雄志氏は『沖縄と本土 いま、立ち止まって考える 辺野古移設・日米安保・民主主義』の中で、国家予算と基地をめぐる誤解について触れている。新聞などで、沖縄県に3000億円の振興予算が決まったと書かれると、「それだけ予算をもらっているくせになぜ文句をつける」という声が出る。これに対して翁長氏は「各都道府県がもらった上に、さらに3000億円を沖縄がもらっているような感じを抱かれていると思うんですね。これはまったくの間違いでありますので、ぜひこれは認識を改めていただきたい」と訴える。
沖縄以外の46都道府県は、それぞれの担当部が個別に必要な予算を国に請求するが、沖縄は長年、米軍統治下にあって慣れていないだろうと、内閣府が間に入って予算請求をとりまとめており、その総額が3000億円にすぎない。「人口1人あたりの地方交付税の額で沖縄は16位です(中略)特別に沖縄だけが飛び抜けているわけではない」(翁長氏)と反論する。
また、元沖縄総合事務局調整官で沖縄大学特別研究員の宮田裕氏が、沖縄に投下される国家予算に関する研究を発表している(沖縄タイムス2010年12月6日付)。それによれば、沖縄が本土に復帰した1972年度から2010年度までの沖縄関係予算は総計で、15兆8000億円。これは同じ時期における国の一般会計予算総額2469兆9000億円の0.6%にすぎない。さらに、この割合は基地関係費用を除くと0.4%まで下がる。沖縄県が全国に占める割合は人口で1.0%、面積が0.6%であることを考慮すれば、決して財政的に優遇されているとはいえまい。
加えて、これらの国家予算も県内で循環するのではなく、県外に流出する割合が小さくない。沖縄タイムスが県建設業協会の資料をもとに算出した統計によれば(2022年1月4日付同紙)、1979年度から2019年度までの41年間で沖縄総合事務局と沖縄防衛局が発注した県内公共工事のうち、全体の46.3%にあたる1兆1854億円を本土企業が受注している。例えば、辺野古新基地建設に関連して2014年に防衛局が発注した工事のうち、85%は県外企業が受注し県内企業は15%にとどまる。また、沖縄における米軍の建設関連発注額も年間700~800億円あるものの、県内企業の受注額は10~15%程度といわれる(2011年6月15、16日付同紙)。琉球新報社編『ひずみの構造 基地と沖縄経済』も、資金力に乏しい県内企業は米軍発注の大規模工事を受注することが難しく、利益の薄い下請けや孫請けとしてしかかかわれないことを指摘する。