解き放たれる女性の魂 瀬戸内寂聴著『花芯』

 昨年亡くなった瀬戸内寂聴さんは、飾らない率直な物言いをテレビでよく見かけたが、作品はまったく読んだことがなかった。どんな小説を書くのだろうと思って手にとったのが本著だ。一時期、文壇を干された契機となった作品といわれる。性表現が問題になったらしい。

 現在の目からみると、過激な表現とは思えない。むしろ、これを過激と呼び拒もうとした時代の頑迷さが浮かび上がる。女性はこうであらねばならぬ。本書に登場される女性たちは、男が決めた仕来りと偏見に縛られ翻弄されながら、己の魂の叫びを解き放とうとする。決して幸せな未来が見えるわけではないが、そうせずにはいられなかった。(T)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です