東北や沖縄は日本文化の源流か 梅原猛や岡本太郎の慧眼に注目
縄文人の度合いは、東北や九州南部、特に沖縄で高いという研究発表がメディアで伝えられた。東京大学の研究グループが、現代人1万人の遺伝情報を分析し都道府県ごとの特徴を調べたという。縄文人系が3万数千年前に日本へ流れ込んだ後、3000年前に弥生人系が渡来して混血し日本人が形成されたといわれるが、すでに2、3000年が経過しているにもかかわらず、遺伝的な地域さが色濃く残ることは驚きである。
こうした地域差は遺伝的な面に留まらず、文化的な面にも広く及んでいるように思えてならない。各方面の専門家からかねてから指摘されてきた点と重なる。3月15日付投稿で紹介した『霊魂をめぐる日本の深層』の中で、歴史学者の梅原猛は、アイヌ文化と沖縄文化の共通点の多さについて触れている。
中でも、芸術家・岡本太郎はすでに1950年代、縄文土器に衝撃を受け美術品としての価値を見出し、日本再発見の旅に向かったことは先見の明があったといえよう。現在の縄文ブームの火付け役という声もある。22年9月10日付投稿で紹介した『神秘日本』では、岡本太郎は1950年代から東北や沖縄に注目し、日本文化の源流を探り当てようとする姿が浮かび上がる。遺伝学や歴史学とはかけ離れ、ひたすら己の直観力を信じる芸術家の生き方には感服せざるを得ない。(T)