自分と社会を知る教育の必要性 打越正行著『ヤンキーと地元』②

 本書の登場する若者たちに共通することは十分な教育を受けられなかったことだろう。学校では1クラス30~40人を同じスピードで、同じやり方で教育しようとするから、追いつけなかったり、はみ出したりする児童・生徒が何人も出るのは当然だろう。教師は授業以外にも、上司や教育委員会に提出する報告書の作成、部活動の監督、学校行事の準備などに追われ、落ちこぼれた児童・生徒の面倒を見る余裕はない。

 十分な教育を受けられなかった青少年たちは、地元のつてを頼って肉体労働や風俗業の世界に入るか、県外の季節労働者になるか、限られた選択肢しかない。延々と単純作業に近い仕事を続け、決してキャリアアップや独立自営など明るい未来は描けないから、ストレスを発散させようと夜の暴走に向かう。本書では、こうした若者たちの世界が描かれている。

 ちなみに、以前と比べると暴走族の爆音を聞くことがめっきり少なくなった。建設現場などで休憩をとる若い労働者たちが互いに言葉を交わさず黙々とスマホの画面に見入る光景を時々目にする。かつてなら暴走に走った若者たちもネット社会に向かうのだろうか。(T)

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