奉仕活動と売名行為の境界線は? 近内悠太著『世界は贈与でできている』③
本書の最も興味深い点は、世の中の行為を「交換」と「贈与」に分類したところにあるだろう。相手に対価を求めて施せば、資本主義の基本である「交換」になり、何も求めず一方的に施せば「贈与」になる。ただし、相手に物質的な対価を望まなくても、感謝してもらいたいとか、よく思われたいとか考えれば、それは感謝や好意の気持ちを得ようとする「交換」になる。「こんなことをしてもらって申し訳ない」と相手の気持ちを縛り「贈与」と呼べない。受け取る側はサンタクロースからのプレゼントのように「ありがたい贈り物もあるものだ」と幸運を喜び、「贈与」する側は贈与そのものにやりがいや生きがいを感じ満足することが本来の姿とする。理論的には理解できるが、対価をまったく期待しない本当の無私の心と、他の人から感謝されたい、よく思われたいという対価を求める心の間に、はっきりとした境界線を引くことはなかなか難しいだろう。(T)