隠された続けた国連軍の歴史 川名晋史著『在日米軍基地』①
国連軍といえば、1950年に北朝鮮の急襲によって勃発した朝鮮戦争で、大韓民国への支援を表明した安保理決議のもと、米軍を中心に編成された有志国連合軍である。現在の安保理ならば、中国やロシアが拒否権を発動しただろうが、当時は共産党支配の中華人民共和国ではなく台湾の中華民国に対して、国連における中国の代表権が割り当てられ、これに抗議してソ連は棄権したため採択された。いずれにせよ、もう70年以上も昔の話であり、無関係と思ってきた。ところが、現在の日本の安全保障にも深い関係があると本書は指摘する。
2015年、集団的自衛権の行使を可能にする平和安全法制が成立するなど、近年、米軍以外の外国軍とも軍事的な協力が注目を集めつつあるが、その源流は朝鮮戦争までさかのぼることができる。国連軍という形で多国間軍事協力が生まれ日本政府も水面下で支持する格好で脈々と続くことを説明する。朝鮮戦争の時に築かれた枠組みによって、在日米軍基地は朝鮮半島に向かう米軍はもちろん、それ以外の国連軍にとっても後方支援拠点となった。つまり、米軍以外の国連軍も在日米軍基地を使用できることになった。この枠組みは現在でも活用可能な状況のままであるとしている。これは偶然ではなく米国の強い意図が働いている。米軍が主力であっても複数の外国軍が参加することによって「米国の独断ではない」という体面を保ちたいからだろうか。(T)