ウクライナとベトナムの戦争 大江健三郎著『沖縄ノート』②

 1972年の本土復帰を控えた沖縄に、戦後日本の矛盾が凝縮されていたといえるだろう。著者はこの時期の沖縄について盛んに思考を巡らし、本土は何を背負わせてきたか鋭くえぐり出そうとした。今注目すべき論点の一つは、米軍のベトナムへの出撃基地という役割を押し付けたことだろう。

 米軍爆撃機B52などがベトナムに向けて飛び立つことなどに沖縄住民は反対したものの、米軍統治下ではまったく意に介されず、日本政府も黙認状態だった。こうした事実は現在、日本国内では忘れられつつある。ロシアのウクライナ侵攻に米国や日本は反対するものの、米国はベトナムに武力侵攻し日本もそれを認めていた時代がある。ロシアの行為は許されないが、米国や日本も他国への武力侵攻という面では「清廉潔白」とは呼べない。ロシアを一方的に非難するだけではグローバル・サウスの国々から協力は得にくいだろう。

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