沖縄スパイ説の起源は? 保坂廣志著『首里城と沖縄戦』➂

 沖縄戦では日本軍が沖縄住民に対して「スパイ行為」を理由に惨殺など不当な扱いを重ねていたことは、関連書物で繰り返し指摘されてきた。理由としては言語をはじめ文化・生活習慣で本土と大きく異なる上、沖縄に対する差別的な意識が強かったことが挙げられてきた。この点を踏まえながらも本書では米軍側の次のような証言も紹介している。

 「日本軍の司令官は、米軍に投稿し、軍務を放棄することを望む日本軍兵士が多数いる事実を知っていたのは明白である。しかし、日本軍にとり、事実を公表すれば由々しき心理状態を招くことになる」

 つまり、日本軍が逃亡し、米軍に投降する事実を隠すため、民間人をスパイにでっちあげたと分析する。7月17日投稿の『首里城と沖縄戦』②でも触れたように、日本軍が首里城地下の司令部壕から撤退する時、暗号表をはじめ大量の機密文章を残したため、その後の戦闘に大きな影響を与えることになった。沖縄スパイ説が日本軍で広まった原因としては、単なる文化的な差異や偏見だけでなく、自分たちの失敗を隠蔽するための可能性も十分にありうる。こうした観点からの沖縄戦のさらなる分析が求められよう。

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