行動で観念を打ち破る 三島由紀夫著『金閣寺』③

情報化社会の現代では、ネットで集めた情報で観念の世界を築きその中に籠る危険性をはらんでいる。本書の主人公はネット社会とは異なるものの、吃音を引き金として劣等感の積み重ねで観念の精緻な世界を組み立て孤独の世界にどっぷりひたる。観念の世界は突き詰めれば突き詰めるほど、破滅の道を突き進み金閣寺とともに滅ぶしか道はなくなる。しかし、無意味さを感じながらも人生を懸けて全身で行動に移り肉体消滅の危機に瀕することによって、彼の内側に眠っていた生命力が噴き出て観念の世界の呪縛から逃れる。ただ、その代償はあまりにも大きく彼の魂は救われたと呼べるのかどうかは分からない。