弾圧された朝鮮出身者の社会運動 梁石日著『血と骨(上・下)』②

1930年代の大阪を舞台とする本書の最初では、己の欲望のままに行動し暴力を振りかざす金俊平にあくまでも焦点を当てて物語が進むと思っていると、途中から日本で生活する朝鮮出身者の社会全体についても語られるようになる。特に注目したのは、日本人資本家による搾取に対抗しようと、朝鮮出身者たちが労働運動を起こそうとしたり独自の会社組織を立ち上げしたりした点である。日本人資本家がヤクザを利用したり警察が事件をでっちあげたりして、こうした動きを潰しにかかる。濡れ衣で逮捕された者はでっちあげの調書に同意させようと苛烈な拷問を繰り返す。一方、この社会には金俊平のように自己中心・封建的な社会観にどっぷりひたって女性を食い物にする男が存在するというリアリティも描かれる。