贈与がはらむ危険性 荒谷大輔著『贈与経済2.0』②
貨幣と商品やサービスを交換することによって関係を断ち切る資本主義とは異なり、贈与経済では贈与を通じて関係を生み出したり深めたりする。しかし、贈与が相手を縛り付け上下関係を固定化する危険性をはらむことも指摘する。具体的には庶民を統治する大名、国王や神官を思い浮かべたらよいだろう。平穏無事に生活できるのは、大名、国王、神官といった統治者のおかげと領内に住む家臣や庶民が信じれば、支配者から統治という恩恵を一方的に贈与されることになり、家臣や庶民にとって税や労役を上納し命令を受け入れることが自明の理となってしまう。こうした封建主義的な贈与関係を避けるために、本書では共同体の構成員たちが上下関係を固定化することなく民主的な運営ができる新たな贈与経済を目指す。