南西諸島の防衛力強化と住民の生命 保坂廣志著『首里城と沖縄戦』④

 昨日(8月22日)は、太平洋戦争中に学童や一般住民を乗せた疎開船「対馬丸」が米軍潜水艦に撃沈されてちょうど80年を迎えた日だった。乗船者1788人のうち、犠牲者は名前が判明しただけで1484人、うち学童が784人を占める。戦時中の住民避難がいかに難しいかが分かるといえよう。

 本書のエピローグでは、南西諸島における自衛隊の配備強化を取り上げているが、実際に想定される台湾有事が発生した場合、住民の避難が非常に困難であることも指摘している。住民を守る手段として、シェルター建設や船舶による避難が考えられる。しかし、これらは沖縄戦の事例を考慮すれば現実的でないことが容易に想像できよう。果たして住民を十分に収容できるだけのシェルターを建設できるか、有事の際に船舶で安全に住民を運べるか。政府や自民党からは南西諸島におけるミサイル部隊の強化など勇ましい言葉はよく聞かれるが、いかに住民の生命や財産を守るかはほとんど耳にしない。沖縄戦の教訓を生かすことを願わずにはいられない。

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