戦果と密貿易の時代

 沖縄といえば「なんくるないさー(なんとかなるさ)」に代表されるように、「楽観的」「温厚」「細かいことにこだわらない」というイメージの人が多いだろう。歴史に関心を持つ人ならば、中国と日本の間で巧みにバランスを保ちながら450年間、独立を保った琉球王国の外交政策を思い浮かべるかもしれない。しかし、石原昌家『空白の沖縄社会史 戦果と密貿易の時代』に描かれた、終戦後間もない沖縄には、したたかであり権力にひるまず果敢に挑む冒険者たちが闊歩していた。

 戦果とは、米軍倉庫から武器や資材を盗み出し売却することによって収入を得ること。戦果という言葉には、沖縄戦ではできなかった米軍への報復を、物資を盗み出すことによって叶えるという意味が込められていたようだ。密貿易とは、台湾や香港など外国はもちろん、日本本土や島々の間の貿易が厳しく規制された時期、一攫千金を目指し警察や米軍の目をかいくぐり無許可で船を使い物資を運ぶことである。

 終戦直後、生きる糧を得るための行動だったことは違いない。一方、戦時下で抑えられていた沖縄住民のエネルギーが、規制秩序が崩壊し緩んだことをきっかに爆発したとも解釈できる。密貿易や戦果をテーマにした作品には、講談社ノンフィクション賞を受賞した奥野修司『ナツコ 沖縄密貿易の女王』や、直木賞を受賞した真藤順丈『宝島』も挙げられる。

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