米軍基地に俯瞰的、総合的判断を

 菅首相が日本学術会議の会員候補6人を拒否した理由について「俯瞰的、総合的判断」と説明したが、米軍基地にこそ必要な判断がではないか。デイヴィッド・ヴァイン著『BASE NATION  米軍基地がやってきたこと』を読んだ感想である。

 なぜ、米軍基地があるのか。日本国内だけでみれば、日本を守り地域の安定と平和を維持するという説明を信じる人は少なくないだろう。しかし、本書に目を通して、世界にざっと800カ所は展開するといわれる米軍基地の実情を知れば疑問をいだくはずだ。

 ディエゴ・ガルシア、ビキニ、パナマ、ハワイ、グアム、プエルトリコ、グリーンランドなど多くの国と地域で、ろくに補償もせずに住民を強制的に退去させて米軍基地を建設し、さらには各地で有毒物質をまき散らし、兵士らの性暴力がまかり通る。すでに、沖縄でも報道されてきた事実と共通する部分は多いが、世界的に「俯瞰」することによって、たまたま沖縄で起きたという説が信頼を失う。基地のある国や地域の平和を守っているという旗印もくすむ。現状のように膨大な数の米軍基地が必要かどうかについても著者は大いなる疑問を投げかける。(T)

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