米軍占領下の生活再建と葛藤  謝花直美著『戦後沖縄と復興の「異音」』

 那覇市の公設市場界隈「マチグヮー」を歩くと、新天地市場本通り、えびす通り、パラソル通りにかけて衣料品店が多いことに気づく。戦禍から生活を立て直す沖縄の姿が、今でも街の風景に記憶されている。子供を抱えながら夫を失った妻ら、生活の糧を求めた女性たちが多く、このあたりで衣料品の販売を始めたことが地域の由来と聞いたことがある。

 本書によれば、女性たちは衣料品を販売するだけでなく、ミシンを購入し裁縫の技術を身につけて、衣料品をつくることから手がけた。男性でさえなかなか仕事のない時代、女性が手っ取り早く収入を得ようとすれば、米兵相手の売春が当たり前。沖縄戦後史ではこの点に焦点があてられがちだが、衣料品をつくって販売し自分の力で生活を再建しようとする女性たちも少なからずいた。

 「復興」という言葉は美しい響きを伴うものの、戦後沖縄ではあくまでも占領者の米軍によって方針が決められた。そこから外れれば厳しい弾圧を受けた。沖縄住民の個人の利益や自由な精神、先祖から代々積み重ねた歴史や伝統はたびたび復興の美名の下に埋め込まれた。絶望的な状況ではあるが、こうした中でも希望を追い求めた住民たちの戦後復興史をまとめたのが本書である。(T)

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