地域の歩みを詳細に記録  仲田栄松編『備瀬史』

 沖縄らしさの一つが、地域史や地域誌が豊富なことではないか。いかに人と地域のつながりが強く、多くの習慣や文化を代々受け継いできたかが推し量れよう。特に字誌の多彩さには目を見張る。改まって比べたことはないが、他県では字誌を発行すること自体珍しいだろう。字という小さな集落について、本を一冊埋めるほど書く内容があるのかと思う。

 本書『備瀬史』を例にとれば、備瀬という集落に関する記述だけで400ページを超える。テーマは集落の歴史、自然、文化・慣習、言い伝えのある場所、地域の伝統行事などに及ぶ。集落の方言やことわざだけでも45ページにわたって紹介する。集落ごとに「方言」と呼べるほどの言葉の違いがあるのかと考えたくなるが、本書によれば、本部町では集落ごとに独自の言語があるという。ちなみに備瀬といえば、沖縄美ら海水族館のある海洋博公園(海洋博の跡地に開設)に近く、集落を取り囲む美しいフクギの防風林で知られる。本書では、「海洋博と備瀬」と題した1章を設け、土地の買いあさりが起きたことが記録されている。(T)


※本書は は当サイトで販売中。本の価格や状態は「沖縄の社会・歴史」の<地域史>コーナーでご確認ください。ご注文は「お問い合わせ・ご注文」コーナーへ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です