復帰とともに本土の米軍基地が沖縄へ  川名晋史著『基地の消長』

 今年は沖縄の本土復帰50周年ということで、全国メディアでも沖縄をテーマにした記事や番組が制作されているが、沖縄問題の本丸である米軍基地について正面から取り上げたものはあまり見当たらないように思える。特に今年はロシアがウクライナに侵攻し、我が国の安全保障について危惧する声は挙がるものの、その重要要素である米軍基地について現実的な議論を始めようという声は聞こえてこない。ウクライナ侵攻以前と同じように、とにかく米国に頼るしかないということだろうか。

 沖縄の米軍基地といえば、米軍が沖縄を占領した当初から同じような状況が続いているかのようなイメージだが、実はかなりの基地機能が本土から沖縄に移されている。大きな転換点としてはまず1950年代そして、「関東計画」が実施された1970年代前半を挙げられる。いずれも本土で反基地運動高まったことを受けて、基地の存在を国民の前から消しながらも、周辺国に対する米軍の抑止機能を維持したいという我が国政権の落としどころとして、沖縄への米軍基地移転が進んだのである。本書は、この関東計画への詳細な分析を試みている。(T)

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