民主国家の中の非民主的組織という矛盾 吉本秀子著『米国の沖縄占領と情報政策』

 最近、国内では軍備の拡大を訴える声ばかりが響き渡る。近隣諸国の安全保障状況を見渡せば、仕方ないかもと思うものの、沖縄の米軍基地をめぐる歴史を振り返ると、無条件で軍隊の力を増強させることには不安も伴う。軍隊組織は基本的に非民主的である。情報は原則として、非公開であり、決定や命令は上層部が下し現場はそれに反対したり異を唱えたりすることはできない。

 本来ならば民主主義国家にはなじまない組織だが、国と国の対立や利害衝突が起きた場合、この非民主的組織の力に頼ることがあるのが国際関係の実情だろう。しかし、一方で軍隊といえども国家の中のひとつの組織であり、まったく異質の体質を守り続けることは難しい。世界でも指折りの民主国家であると同時に、世界最強の軍隊を抱える米国はどうか。軍隊としての機密性や命令指揮系統を守りながらも、民主的な存在であることをアピールする情報政策を繰り広げ非民主的な存在をカモフラージュしてきた。こうした民主・非民主の境界を曖昧化する戦略に向けて、米軍や米国政府・議会がどう立ち振る舞ったか検証したのが本書である。(T)

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