沖縄と民俗学の聖域に切り込む 村井紀著『南島イデオロギーの発生』

 沖縄の民衆文化や民俗を語る上で、はずせないのが柳田国男と伊波普猷だろう。柳田は沖縄をはじめ国内各地を歩き民衆の声や記録を集め、伊波は沖縄出者として沖縄の文化や歴史を深く掘り下げた。いずれにせよ、民衆の声なき声に耳を傾けたというイメージだが、果たして、そうした一面的な解釈でよいのか。本書の著者は厳しく問い詰める。

 日本の「原風景」としての沖縄。さまざまな人たちが、さまざまな思い込め、現在のイメージが形成されたが、明治以降で「南島」を最初に発見したのは民俗学者の柳田国男であろう。その際、柳田は「民俗学者」とは別に、かなり政治的な意味合いを「南島」に込めたと著者は見る。琉球処分の隠蔽につながる。それによれば、柳田は民俗学者として本格的に活動する前は、高級官僚として朝鮮併合(1910年)にかかわったが、その傷を隠すために南島に目を向け、南島イデオロギーを醸成していった。そうした南島イデオロギーの大きな問題点は、琉球処分というもう一つの併合をもみ消し、日本の帝国主義政策を後押しした。沖縄は日本の原風景だから合併しても不自然ではないという論理である。柳田とは動機が異なるが、伊波も日琉同祖論を唱え琉球処分を擁護することによって帝国主義に加担したと指摘する。(T)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です