国家による国民統合と経済成長の加速 渡辺京二著『近代の呪い』①

 著者は『逝きし世の面影』で、明治維新前後に来日した外国人の目を通して当時の日本人を浮かび上がらせたが、「几帳面」「上下関係に厳しい」「内気」など従来のイメージとは異なる日本人がかつては存在したことを教えてくれた。現在の「日本人らしさ」は近代以降に定着した可能性が高いことを暗示している。さて、今回はその近代とは何かについて考察し、その礎をつくったといわれるフランス革命と、それを題材に小説を執筆した大佛次郎に焦点を当てている。

 『逝きし世の面影』で描かれた近代化以前の日本を、今日のように大きく変えた近代とは何か。著者は「インターステイトシステム」と「世界の人工化」を挙げる。前者は国家間の競争を勝ち抜くために、国民をあらゆる面で統合し管理するとともに、際限ない経済成長への道に踏み出す。後者は人間から自然を切り離し、経済成長のための収奪の対象にする。これらのおかげで人間は経済的に安定し豊かさを享受できる一方、国家間はもちろん個人についても絶えず序列化されるプレッシャーにさらされ、自分で判断し地域の仲間らとともに助け合う自由を失い、自然との深い一体感とそれに伴う安心感を味わえなくなり、地球環境は人間の経済活動に耐えられなくなりつつあるという。(T)

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