『沖縄の百年 第1巻=人物編 近代沖縄のひとびと』

 本書は、明治100年を記念して、新里金福と大城立裕の両氏が琉球新報に掲載した連載記事を加筆・補稿してまとめられた。近代沖縄に影響を与えた人物を1人につき2ページから2ページ半程度と、非常にコンパクトにまとめている。人物の紹介の仕方も、特定の思想に偏らず、鉛筆でさっとデッサンするようにあっさりとしたタッチである。

 例えば、琉球王国の最後の王となった尚泰については「写真でみる国王時代の尚泰の顔は、いかにも人工的で能面のようにかたい顔である。(中略)自分の意に反して、あれこれいじくりまわされたものの不満が、その能面のような冷たい表情でうずまいているように思える」。国王の地位を退き東京で暮らようになってからは「琉球国王としてすごした長い歳月より、むしろ東京での生活の方が、尚泰にとっては幸せだったように思える。後年の尚泰の写真は、その顔から人工的な硬さを消して、いかにも自然である」とつづる。

 また、琉球処分の事実上の執行者であり琉球王国支持者からは悪の手先のようにみなされる松田道之については「口もとに大時代的なヒゲをたくわえているが、いかにも目が澄んでやさしい。彼の経歴をしらべてみると、その目もとのやさしさの秘密が解けるような気がする」と描く。彼の行動についても「琉球処分の強行、松田道之にとって、旧幕打倒と同じく、旧支配勢力排除の一環にすぎなかった。その点、彼の果たした役割は進歩的なものであった。その後、沖縄で中央政府の政策が変質したとしても、それはまた松田道之のあずかり知らぬところである」と同情的である。

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