沖縄の聖地 御嶽
県外から沖縄を訪れて、最初に気にかかるものの1つが御嶽ではないだろうか。聖地であるが、県外の神社のように格式ばった社殿はない。あったとしても小さな祠くらいで、場所によっては少し大きめの石が置かれているだけのところもある。しかし、今も地元の人々の信仰を集め、日常的に祈りがささげられる。
今の日本社会を見渡すと、科学万能を追いかけながらも、それとは別の不思議な力を信じたい人々で溢れているのかもしれない。テレビや雑誌で占いコーナー定番化され、マニアが多い世界では「聖地」「巡礼」「降臨」「神」など、やたらと神がかった言葉が多用される。実際の宗教界では参拝者や信者を集めようと、それぞれの組織が、建物の美しさ、祈りの効能やご利益、目新しいパフォーマンスをアピールしあう。そうした中、御嶽の素朴なつくりと祈りに心惹かれる人は少なくないだろう。
ただ、『沖縄の聖地 御嶽』(平凡社 2019年)の著者・岡谷公二氏のように、沖縄各地の御嶽を訪れるだけでなく、関連がありそうな奄美諸島、九州、韓国の「聖なる森」まで足を延ばした人はめったにいないだろう。御嶽の起源に関して、詳細な文献がほとんどないことから確定的なことは言えないが、日本や朝鮮半島との交流を重ねるうちに、御嶽のもとになる「神の森」という概念が生まれたらしい。