辺野古新基地と目的の横暴 國分功一郎著『目的への抵抗』2

 本書は、ドイツ出身の政治哲学者ハンナ・アーレントの「目的が手段を正当化する」という指摘を紹介している。この言葉だけを聞くと、必ずしもそうではないと思いたくなるかもしれない。ところが、現実を振り返ると該当する例が次々と思い浮かぶ。

 他国に軍隊を派遣する時によく使われる理由が「自国民の保護」である。安倍政権時代、集団的自衛権として自衛隊の海外派遣を可能にする安全保障関連法案を成立させる際も「自国民の保護」を掲げた。20年以上の間、政府が辺野古新基地の建設を推進する際、目的に掲げたのが「普天間の危険の除去」だった。近年では2019年の参院選で、札幌市で演説中だった安倍首相(当時)に対してヤジを飛ばした男女2人が、「(ヤジを飛ばした2人が)聴衆から危害を加えられかねない」として道警によって排除される事件が起きた。

 いずれのケースも目的があって手段をとったというより、手段のために後付けで目的を設定したという疑念をぬぐえない。近年は権力を持つ政治家たちが「適切に処理する」を多用している点も気になる。具体的な内容を明らかにしてないにもかかわらず、目的に沿って「適切」を主張するからだ。絶えず、メディアを含め国民は、権力の手段が適切かどうか監視する必要がある。(T)

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