対価を求める資本主義を超える? 近内悠太著『世界は贈与でできている』①

 現代社会において、人から何かをもらったら、その人に何かお返しをする。もらったものとお返しが釣り合うかどうかはともなく、これは交換であり社会の基本であり資本主義の論理である。では、交換だけで社会は成り立つだろうか。人間の社会生活はもともと交換だけでは成立せず、対価を求めない贈与を必要としていると著者は分析する。

 地球上の生物のうち、例外的に人間は未熟児として生まれ、長い期間誰かの助けなくしては生きられない。また、成長して対価を払えるようになったとしても、病気、負傷、社会混乱、老衰などによって再び対価の支払いが不能になることは十分起こりうる。子供が幼いうちは親が養育することはほとんど本能に近く異論は生まれまい。ただ、成人に対する贈与については「困った人がいれば助けよう」という昔ながらの精神があるものの、個人の好意だけでは機能しなくなっている。世界各地で紛争や難民が発生する一方、平均寿命が延びて少子高齢化が進み、再び贈与と社会の関係を検討し直す必要に迫られている。(T)

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