基地関連工事で潤う本土企業(上)
米軍基地をめぐって、本土から沖縄への批判として「基地でもうけているくせになぜ反対する」という指摘がある。これに対して、沖縄のメディアや研究者はたびたび異を唱えているが、本土ではこうした反論はほとんど紹介されていないだろう。
例えば、沖縄タイムス2019年1月6日付によれば、沖縄防衛局が2013年度から17年度までの5年間に発注し契約した公共事業計2513億9717万円のうち、53.0%は県外企業が受注している。13年度の契約は合計170億6973万円のうち、県外企業が49億2017万円(28.8%)に対して県内企業は121億4956万円(71.2%)だった。
一方、14年度は米軍普天間基地の代替施設建設として辺野古工事に着手し、契約額は805億4414万円に急増すると、県内企業240億6280万円(29.9%)に対して、県外は564億8134万円(70.1%)と一気に比重が増した。辺野古新基地に反対する翁長知事が就任後の15、16年度は辺野古の工事が断続的になり契約の全体は減少した。
翁長前知事の埋め立て承認取り消しをめぐる訴訟の最高裁判決で県が敗訴し、政府が護岸工事に着工した17年度は、契約額は813億1917万円と過去5年間で最高になり、県外は432億8262万円と53.2%を占めた。辺野古のような大型工事については規模の大きな本土企業が受注に有利といえよう。
さらに長い期間で見ても同様の傾向が見られた。沖縄タイムス2022年1月4日付によれば、1979年度から2019年度までの41年間についても、沖縄防衛局(沖縄防衛施設局)が発注した県内公共工事のうち、県内企業が5201億5670万2千円(54.8%)、県外企業が4284億1406万4千円(45.2%)それぞれ受注した。県建設業協会の統計資料をもとに同紙が算出した。この統計には、下請けなどの状況は反映されていない一方、2006年度以前は共同企業体(JV)分が含まれておらず、実際の県外受注額はさらに膨らむ可能性があるという。
これが道路や公共施設など一般的な公共事業ならば、たとえ県外企業が受注しても完成後は社会資本として沖縄に寄与することになる。しかし、基地関連となれば、工事そのものの利益の多くが県外に流出する上、完成後は基地負担だけが残る。