海兵隊の沖縄駐留を望むのは日本政府!?
沖縄の米軍基地に関連する資料に目を通しているが、米海兵隊を沖縄に押しとどめるのは日本政府という疑念が改めて湧き上がる。ベトナム戦争や東西冷戦の終結など、国際政治の重要転換点では米海兵隊の沖縄からの撤退が真剣に検討されたものの、日本政府が反対し海兵隊の沖縄駐留が続くという構図が浮かび上がる。
例えば、オーストラリア外務省の外交文書によれば、1972年から73年にかけて米国防総省は沖縄を含む太平洋地域から海兵隊を撤退させることを真剣に検討していた。泥沼化するベトナム戦争の巨額戦費に苦しんでいたことが背景にある。実際、在日米軍などを統括する米太平洋司令部の大将が1972年、海兵隊は8年から10年のうちに撤去される可能性があると発言している。しかし、日本側が海兵隊の駐留継続を主張したため、日本側の財政支援を引き出し駐留維持に向かうことになったという。
また、沖縄タイムス2019年5月6付によれば、東西冷戦の終結を受け米軍で戦略の見直しやコスト削減などが進めれられたいた1993年当時、パウエル統合参謀本部議長の特別補佐官を務めていた元陸軍大佐が「(海兵隊機の墜落事故などを受けて沖縄県内の政治的圧力がさらに強まり)海兵隊は10~15年以内に沖縄からの撤去を余儀なくされるだろうと予測していた」と証言した。移転先として、沖縄より演習場として適性が高い日本本土を望んだが、「日本政府はまったく耳を傾けなかった」と指摘する。1995年、沖縄で起きた米兵暴行事件の重大性を米国側が認識し、撤退も視野に海兵隊の移転を検討したが、日本側が駐留継続を望んだと、当時の米政権幹部も述べている。
いずれも米国側の発言であり、海兵隊が沖縄に駐留する責任を日本政府になすりつけているという見方もできるが、日本政府の関係者には海兵隊の沖縄駐留について「政治的理由」を挙げる者が少なくない。中国など緊張関係にある周辺国に対する抑止力として米海兵隊は必要だが、本土で引き受ければ大きな反発を受けるため、沖縄駐留以外の選択肢がない。財政面でも、日米地位協定には定めのない米軍基地の経費負担「思いやり予算」が1978年から始まるなど、米国側の証言と明らかに矛盾する事実や発言は日本政府から見られない。(T)