岡本太郎も注目した獅子踊り 稲村行真著『ニッポン獅子舞紀行』②

 鹿などへの祈りが源流にあるといわれる岩手県の獅子(鹿)踊りが興味深い。一般的には、幕を持って踊る「幕踊り系」と太鼓を持って踊る「太鼓踊り系」に分けられる。本書で紹介する「長野獅子踊り」(遠野市)は幕踊り系だが、鹿のような角がついた面に、ふわりとした細長くて白いカンナガラ(カンナで木材を削った時に出る木くずに似ていることが名前の由来らしい)を大量にまとう姿が印象的だ。

 また、かつては岡本太郎が感銘を受けて作品も制作したといわれる花巻の鹿踊りは太鼓踊り系だが、背丈よりもはるかに高くササラと呼ばれる2本の竹を腰に差し、時に繊細に時に激しく踊る。ササラは角を象徴するようにもみえるが、神具の御幣を意味するらしい。たまたま2012年の「全島獅子舞フェスティバル」で「太鼓踊り系」の「山岸獅子踊」(盛岡市・写真)を見たが、こちらは腰に御幣を差していた。当時の説明文を読み返すと、鹿の仕草を表現しているらしい。パッと見た印象では花巻の鹿踊りに比べ踊りとして様式化され洗練されているようだった。

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