ヤンバル住民の結束力

 池野茂著『琉球山原船 水運の展開』(ロマン書房 1994年)は題名のとおり、ヤンバル地方(沖縄本島北部)の水運史を振り返るが、その中で興味深いのは、共同売店が山原船の運航を手掛けた点である。

 共同売店は、集落の住民が共同で出資・運営する小売店舗であり、現在でもヤンバルを中心に残る集落は少なくない。交通の便が悪い地域では個人での買い物が難しいことから、共同で購入し販売する仕組みとして設立された。地域によっては、商品の流通ルートを外部資本に独占的に握られ、住民は高い値段をふっかけられ搾取されたため、これを防ぐ意味合いもあったという。

 こうした経緯から各地で共同売店が設けられたことは聞いていたが、商品を運んだり地域の産品を出荷したりするために、独自に船まで運行していたことは初めて知った。生活を良くしようと地域住民がいかに結束したかを物語っていよう。歴史といえば、中央の権力者の言動ばかりに注目するが、庶民の暮らしに起きる変化にもっと光を当てる必要があることを痛感する。

 何年か前、沖縄国際大学の研究室が主催するツアーで、1906年最初に共同売店を設立した本島最北端の奥集落を訪ねたが、共同売店は今も続き、特産品のお茶の生産、宿泊施設の運営、町おこしイベントなどと連携させていることを聞き印象に残っている。


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