沖縄をめぐる天皇発言

 昭和天皇とのやりとりを初代宮内長官の田島道治氏が記した「拝謁(はいけつ)記」について、NHKの特集番組(8月17日放映)が再現ドラマ仕立てで内容を紹介していたが、沖縄の地元紙も8月20、21日に大きく報道している。1947年9月、共産主義勢力を抑止するため、米国が沖縄に長期間、軍事基地を保有することを希望したとされる「天皇の沖縄メッセージ」が知られており、昭和天皇が沖縄についてどのような発言をしたか関心が高いからだろう。

 今回明らかになった内容で地元紙が注目したのは、1950年代前半、米軍基地への反対闘争が日本各地で盛んになっていることについて、「一部の犠牲、やむを得ぬ」という昭和天皇の発言である。国防の観点からすれば、米軍基地を日本に置くことは必要であり、基地反対運動に意を唱えている。基地問題からみれば、1947年の「天皇の沖縄メッセージ」と同一線上にあり、そう驚くべき内容ではないだろう。

 改めて感じたのは、安全保障では、この昭和天皇の考え方が現在の日本でも主流になっていること。半世紀以上経過して、日本や米国の状況、国際情勢は大きく変わったにもかかわらず、安全保障をどう捉えるかがほとんど変わっていない。最も強い力に頼る「寄らば大樹の陰」であり、安全保障という大義のもとでは「一部の犠牲、やむを得ぬ」(こう考える本人は、「一部の犠牲」の中に自分は含めないが)である。しかし、強い力だからこそ歯止めがききにくい。戦前、世界最強を自負する日本軍を過信し頼っていたから、戦争に突入したのではないか。トランプ政権下のアメリカも同じ危うさを秘めていないと誰がいえるのか。

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