同盟を強調しても日本防衛には触れず 川名晋史著『基地の消長 1968-1973』①
本書で気になるのは在日米軍の役割に関する記述だ。「日本防衛を支援するための部隊も展開していない」「日本本土を防衛するために日本に駐留しているいるわけではなく、韓国、台湾、および東南アジアの戦略的防衛のため」「ほとんどすべてが米軍の兵站目的のため」など、米軍内部の資料や幹部の発言を引用しながら、「日本の基地は日本防衛の手段とはみなされず、西太平洋地域安全と米軍基地防衛のために存在する」と結論づける。
これは今改めて明らかになったことではなく、以前から漠然とは言われていたことであり、取り立てて驚くべき事実ではあるまい。ただ、近年、沖縄で米軍基地に対して批判的な動きが起きると、日本の安全保障に悪影響を懸念する声が挙がる。中国や北朝鮮の軍事的脅威が強調され、昨年はロシアのウクライナ侵攻によって武力衝突の危険に切迫感を覚える中、日本の政治家の口からは日米同盟の強化がより強調されるようになった。
しかし、日米同盟の強化がいかにして日本の安全保障の強化につながるのか。雰囲気だけが先行し、具体的に語られることはほとんどない。アフガンからの撤退やウクライナへの軍事支援など、協力関係にあった国々に対する米国の対応について詳細な分析も示されない。