沖縄における言論統制の歴史

 今からちょうど15年前の2004年8月13日、沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落したが、8月12日付の沖縄タイムス・インタビューで、当時の知事だった稲嶺恵一氏が「(墜落)現場では警察も消防も米軍に立ち入りを規制された。日本の民間地なのに。主権国家として由々しき事態で、米国の属国のように見えた」と語った。

 「属国扱い」はたまたまではない。県外では、米国は日本と対等な同盟関係にあり、中国、ロシア、北朝鮮などの脅威に対して心強い味方と信じているかもしれないが、「属国扱い」を味わってきた沖縄では、そうした米国の顔は表向きにしか見えない。ヘリ墜落事故以前から、米軍の事故などについては県や地元警察の介入を拒み、軍にとって都合のよい情報しか外に出さず、治外法権状態を続ける状況は、今も変わっていない。

 米軍が直接統治していた1972年まではさらに露骨だった。米軍に対する批判を許さず、直接抑え込んでいたのである。そうした状況は、門奈直樹著『アメリカ占領時代 沖縄言論統制史』にまとめられている。少しでも米軍に意に沿わないと判断されれば、一般雑誌、組合機関紙から高校の文芸誌まで出版不許可となった。

 さらに、不許可の出版物を所持・配布したとして逮捕され、懲役や罰金の刑を科された人もある。米軍に批判的と見なされた新聞社は銀行融資の停止などの嫌がらせを受け、反軍デモに参加した教師や学生は、教員免許をはく奪されたり、謹慎や退学の処分を受けたりした。

 自由と人権を重んじる米国といっても、それは自国民に対して。自国民以外では勝手が違ってくる。あくまでも判断の最も重要な基準は、効率的に米国の利益を実現できるかどうかであり、それをもとに冷徹な計算を駆使して計画をたて容赦なく実行に踏み切る。トランプ政権は「米国第一主義」という色づけをされているが、以前から「米国第一主義」は貫かれてきた。トランプ政権とそれ以外の政権の違いは「第一主義」を露骨に表に出すか出さないかの違いだろう。


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